2020年に(仕事以外で)手にした機材のまとめ

2020年、COVID-19の影響で仕事での撮影内容が変化。機材構成に変化はなかったものの、その使用比率は大きく変化した。私用の機材はというと、細かな変化はあれど劇的な変化はなかったように思う。

Lightroomでショット数の統計を見てみると、センサーフォーマット別では、いわゆるフルサイズが12%、APS-Cが40%、マイクロフォーサーズが35%、1インチが13%という内訳。

  • フルサイズ機

主に仕事の機材のテストを兼ねた撮影で、EOS Rの使用率が高い。画質の向上に期待して買ったRF 24-105Lだったが、私が使う条件ではEF 24-105Lと大きな違いを感じられず、軽い失望を味わった。

コロナ以後の仕事ではα7Rm2の使用率が高いので、RFシステムを手放すかどうかゆるく考えているところ。

  • EOS M100、M

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EOS M100

APS-Cのカテゴリの中ではEOS M100の使用率が最も高い。M100は、それ以前に持っていた初代EOS MとあわせたEF-Mマウント機で2020年の写真のうち約22%を撮影した。

EF-M22mmが試したくて格安で購入したEOS M。そのサイズ感は気に入ったが、性能はあと一歩というところ。そこをなんとかしようと導入したのがM100。買い換えるまでの間、約一ヶ月。

私の中では、このカメラはGM1のカテゴリに入る。コンパクトカメラよりかさばるが、メインバッグに容易に携行でき、必要があればすぐに取り出して撮影できる。携行性と画質のバランスが取れている普段使いのカメラ。

EF-MはRFに吸収されるという噂があるが、RFマウントでこのサイズのカメラを実現できるのだろうか。

M100のボディに高級感はない。全体的にプラスチッキーで、液晶のフレームは分厚くなんだかスマートじゃない。初代Mのほうがまだ高級感がある。シャッター音もバシャリ、と甲高い。でも正直に言うと、これで十分。これは日常的に持ち歩く道具なのだ。

初代にはあったグリップ(カメラを右手で握ったときに中指や薬指が当たるあたりにあるあれ)がないので、ヨドバシで買ったサードパーティー品を貼り付けている。これがあるとないとでは大きな差があるのでRX100におけるAG-R2のような純正部品があるとちょっと嬉しい(純正のフェイスジャケットはぼってりして好みじゃない)。

操作はタッチパネルに大きく依存したものだが、使用目的が使用目的だけに大きな問題はない。操作系に慣れると撮影に関わるほとんどの設定をメニューに入らず、撮影画面かステータス表示画面からタッチパネルで設定でき便利だ。

一眼レフのようにファインダーを覗きながらISOボタンを押してダイヤルを回す…というような操作にはISOに割り振ったボタンが必要だろうが、そもそもこのカメラにはファインダーがない。構図を見ている液晶画面をそのままタッチで操作できるので快適。まあ、私がEOS R等でキヤノンのインターフェースに親しんでいるのも、それほど困らなかった一因かもしれない。

比較的最近(2017?)のカメラなので、基本的な性能は高い。DPAFは速く正確で、タッチパネルで画面のほぼどこででもAFできる。暗かろうが明るかろうが速度・精度ともに大きな変化がないのも好印象。

AE、AWBともに完璧とは言わないが、安定感があり信頼に足る。入門機だからかAEブラケットがないのが個人的に不満。

センサー性能は十分だと思う。色はキヤノンの色で、信頼できる。一度、TS-Eレンズで撮影する仕事で、対象に対し手持ちのTS-Eレンズの焦点距離が足りなかったのでこのカメラにアダプター経由でレンズを使用して納品したことがあったが、全く問題なかった。仕事で本格的に使うとなると、ホットシューがないのが残念。

レンズはしばらくEF-M22だけだったが、年末にEFレンズが付けられるマウントアダプターやEF-M15-45を購入した。EF-M22は噂に違わない良レンズ。小さく、明るく、良く写る。もちろん、F2開放から全画面にわたってシャープ…というレンズではない。携行性と画質のバランスが良い。手ブレ補正がないのが欠点といえば欠点か。このレンズを一回使ってしまうと、他メーカーの2.8の単焦点がどうしても暗く感じてしまう。

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Ricoh GR

APS-Cの次点はGR。小さなポーチに入れ、メインバッグの外に出して携行するタイプのカメラで、私の使い方では1インチ機と競合する。1インチ機と比較するとGRには明確な利点があって、それが大きなセンサーと良いレンズから出てくる画質。ズームを諦めることで、高い機動性と良好な画質が得られる。

レンズはF2.8と暗いが、画質は良い。ほぼ振動のないシャッターのおかげでブレにくく、手ブレ補正がなくても割となんとかなるし、使っているうちにブレていてもそれもまたよし、と思えてくるのがこのカメラの不思議なところ。

AFは洗練されているとは言いづらく、日中に比較的遠距離のものを撮影する分にはいいが、暗くなるにつれ遅く、不確実になって行く。近距離のものを撮影しようとすると遅くなったり、精度が落ちたりするし、手元のものを撮影しようとするとマクロモードに切り替えないとならなかったりする。

色はちょっと濁ったように表現される傾向があるが、特定の色だけ転んだり強調されたりということもなく良好だ。AWBは無視できない頻度で理解できないずれ方をするときがあるので、状況に合わせてこまめに設定するか、RAWで撮影するのが良いだろう。

RAWから現像すると、このコンパクトさから考えられない豊富なトーンと色、そしてシャープネスに驚くと思う。

センサーにゴミがつくことが多いことで有名なこのカメラだが、分解清掃のノウハウがネットで調べられかつ比較的容易に実行可能なので、自分で清掃するという手もあることは知っておいて損はないかもしれない。

  • X-E2

27mmパンケーキレンズが使いたくてレンズとともに購入。EOS Mと同じカテゴリで活躍することを期待して導入したのだけど、いざ手にしてみるとやや大柄に感じられ、それなりに撮影する気分にならないと持ち出さなくなってしまった。

中古在庫からシルバーを購入したのだけど、フジのカメラ全般に見られる締まりのないシルバーで、これも影響しているかもしれない。

購入時はなんとファームウェアが1.0で、最新のファームウェアにアップデートしたところ印象が大きく変わった。画面表示が繊細になり、AFも高速化された。とはいえAFは洗練を欠く印象で、像面位相差AFが搭載されていると謳うがこまめにウォブリングする動作はコントラストAFそのもの。タッチパネル、ジョイスティックがないので測距点を動かすのは十字キー。AE、AWBともに大きな問題は感じないが、とりたてて優れているとも感じない。

軍艦部にシャッタースピードダイヤルを持つフジ操作系のカメラだが、XF27mmという絞りリングのないレンズを選んだので、絞りを任意に指定する際は小さなリアコマンドダイヤルを回転させて行う。

それに加え、このカメラはシャッタースピードの微調整にリアコマンドダイヤルを使用する。フジのシャッターダイヤルは1段刻みなので、それを1/3段刻みで調整するためにリアコマンドダイヤルが使われる。シャッタースピードの微調整には本来であればフロントコマンドダイヤルが使用されるのだが、このカメラにはフロントコマンドダイヤルが存在しないので、リアコマンドダイヤルがその操作に割り振られる。

つまり、リアコマンドダイヤルにシャッタースピードと絞りの操作がかぶってしまうのだ。ではどうするかというと、シャッタースピードと絞りの操作切り替え機能を数少ないFnボタン(※)に割り振って、都度切り替えながら使うことになる。

(※:十字キーをAF位置の移動に割り振ると残るFnは3つ)

ところで、このカメラのリアコマンドダイヤルは押し込むことができ、そこには「マニュアルフォーカス時のピント位置の拡大機能」および「画像再生時の画像拡大機能」が振られている。

オートフォーカスで撮影しているときはリアコマンドダイヤルの押し込みに機能はない。そこにシャッタースピードと絞りの操作切り替え機能をアサインできればいいのだが、不便なことに、リアコマンドダイヤルの押し込みにユーザーが機能を割り振ることはできない。

以前所持していたX100、X-T1などを使用していたときにも思ったが、フジフイルムは当初想定していた操作系から外れた製品をラインナップに加える際に、操作系を極力変更しないようにするあまり、新製品の基本的操作に支障をきたしているように思えてならない。

独自操作系を標榜したシステムの中でその操作系から離れた(絞りリングがない)レンズや(フロントダイヤルがない)カメラを発売するのであれば、そのユーザーに対しフル機能を備えた製品と同等とまでは言わないにしろ、現状よりもう少しスムーズなユーザー体験を提供してほしいと思う。

富士フイルムのカメラを使っていて気になるのが現像ソフト。私は普段Lightroomを使用しているのだけど、Adobeの現像エンジンはX-TransセンサーのRAWとやや相性が悪い。問題なく現像できるのだが、CaptureOneと比較してディテールの再現がやや甘くなる傾向がある。

カメラにはCaptureOne Express for FujiFilmが付属してくるのでそれを使えばいいのだが、CaptureOneのカタログの概念が未だに理解できないので使う気が起きない。とはいえIridient X-Transformerを導入するほどでもなく…悩ましいところ。

上の話とも関係するが、フジのカメラはどのフィルムシミュレーションが測色的に比較的忠実な発色になるのだろうか。選択肢が豊富なのはいいが、どの設定もどこか癖があるように思えて、疑心暗鬼になってしまう。キヤノンで言えば「忠実設定」のようなものがあればそれを使いたい。

とはいえそれもJPGでの話。RAWを前述のCaptureOne Express for FujiFilmに通すとフィルムシミュレーションの設定はどこかに行ってしまい、X-E2 genericみたいな名前のプロファイルにされてしまう(私が設定する場所を見つけられていない可能性もあるかもしれない)。

フィルムシミュレーションを売りにするカメラに付属してくる現像ソフトウェアで、フィルムシミュレーションの設定ができないというのはどうも片手落ちに感じられる。

Lightroomにはカメラマッチングのプロファイルにフィルムシミュレーションに対応するプロファイルが一式揃っているので、素直にLightroomで現像すべきなのだろうか。

知人から借りているカメラ。このカメラ、RAWをLightroomで現像できなかったり、現像可能なソフト(SPP)が扱いづらかったりで、貸してくれた方には申し訳ないけれどもあまり使っていない。

私は、撮影したすべての写真をLightroomの年別のカタログに登録してそこから参照しているので、Lightroomのカタログに表示されない写真は検索の対象にならず、存在していないも同然だったりする。

DPの撮影分を撮影当日に全部現像してLightroomに読ませる…のは現実的ではないので、とりあえず同時記録のJPGをLightroomに読ませているが、そうなるとそのままLightroomで現像したい。

このような理由で、このカメラで撮影した後は同じシーンを別のカメラで抑えないと不安に感じるようになってしまった。そうなると最初からその別のカメラだけで撮影するようになり、段々とこのカメラを使わなくなった…というのが現状。

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LUMIX G9 PRO

マイクロフォーサーズのカテゴリはLUMIX G9の圧勝。2020年に最も使用したカメラもG9で、2020年の写真の3割弱を撮影している。私用以外でもオンライン授業に用いる動画を撮影するカメラとして、仕事で使用している。

ただ、その大きさゆえに日常的に携行するカメラではなく、なにか明確に撮りたいものがあったり、撮影が主眼の外出のときに持ち出される。M100やGRなどの、日常的に持ち歩いて目についたものをぽつぽつ撮る、という感じとは逆。仕事で使っているカメラに近い立ち位置のカメラ。

何をやらせても大抵うまくこなす優等生で、あれこれ手間がかかる感じはなく、人によっては面白みがないと思うかもしれない。高級さとは異なったベクトルで作られたボディは無骨で、手にすると剛性感を感じるとともに、大きさに比して軽い印象を受ける。グリップが良いのと、レンズが軽いのでそう感じるのかもしれない。

シャッターボタンを触ってみるとわかるけど、シャッターが切れるまでがとにかく短い。フェザータッチシャッターなのもあるけど、全体的な動作が軽快なのだ。手ブレ補正も効きが良く、シャッター自体のショックもほとんど感じられないので、どんどんシャッターを切ってゆくことができる。

AFは正確で、暗いところでも高速に動作する。コントラスト測距特有のウォブリングがあるが、大きくないのでそれほど問題にならない。

タッチパネルを装備し、撮影に関する機能の多くをタッチパネルから変更できるが、同時に数多くの物理ボタンを備えているので一眼レフのようにファインダーを覗きながら物理スイッチを用いての操作も可能だ。

画質は良好。色は全体的に落ち着いた色で、派手な色転びもない。GX1の頃からLUMIXを使ってきたが、色や階調はかなり良くなったと思う。同一世代のAPS-Cと比較すると高感度描写や暗部を持ち上げたときの性能はあと一歩というところだが、それも極端な条件でのことかな。

少し前のファームアップで動画機能が良くなったらしいが、私はフルHD動画しか撮影しないので恩恵に預かっているかどうかはわからない。

動画記録時間には29分59秒の制限がかかっているが、私の環境では限界まで録画してもオーバーヒートしない。以前、仕事の記録でα6000で動画を撮影したときに動画記録が20分くらいで自動的に止まっていたりした(電池もカードも残量は十分だったのでオーバーヒートかも)苦い記憶があるが、G9はそんなことはなく、90分くらいの収録でも問題なく使用できている。

マイクイン、ヘッドフォンアウトが揃っているのはもちろん、HDMIのポートがフルサイズなのが便利だ。

  • 1インチセンサー機

RX100のテレ端が暗いので、似たようなスペックでテレ端が明るいG7Xを一二年前に導入、以後ずっと使っていたのだけど、どうもG7Xのレンズが偏芯しているようで手放してしまった。以後GRを使用していたのだけど、やはりズームがないのは不便に感じるときもあり、RX100を再び取り出してぽつぽつ使っている。

携行性でGRと競合するRX100だが、その利点はズーム。画質もGRと比較すれば見劣りするけれども、決して悪いわけではなく高い水準にある。久しぶりに使って意外に良かったので、レンズの明るいRX100m3が気になってしまった。