メモ(ニ)
今や偉大なる星々は地平線の彼方に堕ち、世界は闇に閉ざされた。
地上には残された人々の灯火がまばらに、かぼそく瞬いているだけであり、重たい闇は世界を厚く覆った。世界が萌えいづる時代の、さながら鍛冶場のような活気は既に失われ、人々は互いを信頼し手を取りあって世界を開拓しようという意気を忘れ、疑心暗鬼に捕らわれて剣を手に取り、互いを殺しあった。そのような時代にも己の居る世界をよりよく開拓してゆこうという心を持った人々も存在しはしたが、その手にかざした灯火はあまりに弱々しく、そしてあまりにも各人がばらばらに世界を照らしていたので、闇を払うことは不可能であった。
ただ、北点に輝く、動かない星一つだけが、人間達の救いであった。