なくてはならない

自分の奥へ奥へと迷い込んでいく黄昏。
(人にとってなくてはならない写真、というものが存在するとしたら、それはどんな写真だろう)
(それは、記憶に従事する写真だろうか)
カメラを片手に再開発で漂白されたような駅東の大通りを歩きながら、私は迷い込む。
百数十年前まで、人間は写真というものを持たなかったのだ。
(なくてはならない写真、なんて存在するのだろうか)
(外部記憶なしには記憶を支えることが困難なまでに世界は複雑化している)
その百数十年のうちに?
いや、カエサルが既に書いている、

(…)学ぶものが文字に頼って記憶力の養成を怠らないようにしたいのと、二つである。確かに多くの人々は文字の助けがあると、熟達しようという努力も記憶力の訓練もないがしろにしてしまう。(カエサル著 近山金次訳『ガリア戦記岩波文庫、1964年、198頁)

人はそうやって世界をより複雑に捉えようとしてきたのだろうか。

(衣・食・住は強い)
人の生活がどうあっても、何らかの形で必要になってくる。
人の基本的な営みにつながっているからだ。
写真は、どうだ。
どうなのだ。