2021-2023 ごく私的な、カメラについてのメモ

前回のタイトルが「2020年に(仕事以外で)手にした機材のまとめ」なので、なんと2021~2023年まで三年間は情報が更新されていないことになる。

1 仕事カメラ

1.1 静止画

RFシステムはRとRPを使用した後に断念し、併用していたSONY Alphaに完全に移行した。現在はA7M3およびA7RM3を静止画用途で使用している。

なぜA7系に移行したのかというと、センサーのダイナミックレンジ、ネイティブレンズに使いたいレンズがあった、ファインダー表示周りの出来、バッテリーの保ち、AF-C時ライブビューで撮影できる速度、MC-11の存在等、こちらの必要な要件をA7M3が高い水準で満たしていて、かつ比較的安価に入手できたから。

SONY機はColor scienceについて何かと言及される事が多いが、主な撮影対象(とスタイル)のせいか個人的にはほぼ問題を感じることがない。基本的にRAWで撮るうえ、色についてシビアな仕事ならカメラと光源とレンズ毎にカラーチャートを撮影してプロファイルを作成して詰めるので、ある程度整ったところから始められるのが大きいのかもしれない。

SONYと対比してよく語られるのがCanonのColor scienceの優秀さだが、たしかに優秀とは思うものの、信頼しすぎるのも問題と思う。ピクチャープロファイルやホワイトバランスをオートのままにしておくと一部の色でかなりズレた色を返してくる(特に一部の青が彩度の高いシアンに転ぶ)ケースはキヤノン機を使っているクライアントの写真で毎年何度も目にしているし、RAW現像においても濃いめの赤や橙、一部のシアン等は独特の表現と感じることがある。

色の再現傾向の確認のために、あるクライアントとブラインドテストのようなものをしたことがあるが、色の再現という点ではSONY機から現像されたファイルが100%の確率で選ばれた。数ヶ月の期間をおいて何度か試しても同様の結果なのでそれなりに安定していると思う。なお、人物の肌の自然さという点では異なる結果になったことを付記しておく。

1.2 動画

動画の依頼が若干増えてきたので、それに対応するためにLUMIX Sシリーズを導入した。依頼を受けた当初A7M3でテストしたのだが、撮影対象から要求されるダイナミックレンジが広いため8bitでの収録に限界を感じ、10bit内部収録ができ将来的にRAWも外部出力できる安価な(※)カメラを急いで探し、S1とS5を導入した。うちの用途に対してはオーバースペックな機材で、余裕をもって動画撮影が出来ている。

(※:当時はA7C2もA6700も存在せず、中古でS1とS5、MC-21と揃えてもA7M4単体より安価に済んだ)

ただ、静止画と動画を同時に撮影する仕事になると、静止画用のシステムと動画用のシステムを別々に持っていかなければならず、機材量が問題になる。私の動画撮影ではカメラレンズの他にもジンバルやフルードヘッドのついた三脚等の機材を持ち込まなければならないので、カメラを二セット持っていくのは重量的になかなか厳しい。

そこで静止画と動画の機材を一つにまとめられないか検討をしているのだけど、AEブラケットの仕様の不自由さ、撮影後画像を拡大した際の画質、ネイティブレンズの選択肢の少なさ等から仕事での静止画用途にLUMIXを選ぶことは難しく、現状ではSONYに統合するほかない状況だ。LUMIX Sは動画だけではなく静止画の画質についても気に入っているので手放すのが惜しく、切り替えにはまだ踏み切れていない。

2 仕事以外で使ったカメラ

これを書くためにLightroomで集計を見たのだが、タイムラプスを撮影するようになってからは特定のカメラのショット数が突出するようになってしまって傾向が把握しづらくなった。ので、雑感をぼんやりと書く。

2.1 2021年

・EOS M100、M5、Kiss M

2020年はEOS M100をよく使っていたが、2021年はそれに加えてM5、Kiss Mも使った。EF-M 22mmと組み合わせたときにシステムとしてのサイズが小さいことが利点。ファインダーがついていると便利なので、M5ばかりを使っていた気がする。

Kiss Mは純正ストロボシステムと組み合わせてWeb媒体の俯瞰撮影のロケ仕事でよく使った。システムが軽量なので俯瞰で使うアームや三脚を比較的軽量なもので済ませられる利点は大きい。バリアングル液晶はカメラの背後にいなくても構図を確認したり、タッチパネル機能を用いてカメラを操作できる。頭の上に設置したカメラの後ろまで登ったりしないで済むのだ。純正ストロボを使用しているのでカメラのメニューから各ストロボの発光量を制御可能で、タッチシャッターを使えば液晶で操作が完結する。なお、俯瞰撮影の仕事がある時期を境に激減したことを受けて、Kiss Mはお役御免となった。

LUMIX G9 pro

2020年に引き続き、G9をよく使った。G9にはタイムラプス撮影モードが有り、それでタイムラプスを撮影するようになった事が大きい。電池の保ちが良く、長時間のタイムラプスでなければ電池で行えるし、長時間の場合でもUSBから給電できるので、電源が取れる室内であればタイムラプスについてまわる電源周りの問題をほぼ無視できる。
ただ、タイムラプス以外の用途で持ち出したとき、特に高感度を要求される撮影ではどうしてもセンサーサイズなりの結果となるので、後々LUMIX Sにその座を明け渡すことになった。

Ricoh GR

GRは持ち歩いて日常の記録を記録するためのツールとしてはとても優れていると思う。

あまりにセンサーにゴミが入るので何度も分解していたところ、背面液晶の周囲を這うように配線されている紅白の線のはんだ付けが外れてしまった。その線が外れた状態でもカメラはちゃんと動作している(ように見える)ので、一体何の線なのか気になる。

2.2 2022

・EOS RP

仕事用のカメラをA7系に切り替えた後もしばらく、EOS RPは自分用として手元に残していた。軽く、手に馴染んで、画質も十分。マウントアダプターでEFレンズの遺産が使えるので、普段はEF40mm F2.8や50mm F1.8などと組み合わせて使い、いざとなればLレンズを付けることもできる。最大の問題であるバッテリー保ちの悪さも、こまめに電源を切ることでまずまずカバーできる(仕事のときは大抵つけっぱなし)。Kiss Mもそうだったが、CR3は圧縮による画質の損失が少なく、かつファイルサイズを圧縮できて便利。バッテリー以外は良いカメラだと思う。

EOS 5D

初代5Dの中古をあらためて購入。始めて手にしたフルサイズ機はこの5Dだったので、手に取るとこのカメラで撮った仕事のことを思い出してしまい懐かしくなる。
今のカメラからすると何の装備も無いようなカメラだが、それが撮影の体験をとてもシンプルなものにしてくれ、飾り気のない光学ファインダーもあいまって、たまに防湿庫から出して使うと撮影に対して新鮮な気持ちになれる。
1200万画素ということもあり、解像度的な面で言えば今のカメラと比較して見劣りするかもしれないが、コントラストの強めな絵作りがMark2以降の5Dにはない独特な世界を持っていて、単純に比較できない。

・E-M5M2

店頭で安く売られていた中古を購入したのだが、G9 proが大きいと感じたときに持ち出すにはうってつけで、よく持ち出して使った。よく効く手ぶれ補正、暗いけどよく写るレンズもあって、EOS M5でやっていたことをほとんどこれでやるようになった。ただどうにもはっきり写りすぎる気がして、結局手放してしまった。

2.3 2023年

・DC-S1、S5

動画の仕事用に買ったカメラだが、それだけでは勿体ないと持ち出して使っている。

S1は満足度の高いカメラなのだけど、とにかく大きく、重く、バッテリー保ちが悪いので、持ち出すのに気合が必要。その点S5は小さく、軽く、キットレンズの20-60の軽快さもあって持ち出しやすい。仕事でない場面では、この軽快さが重要で、どうしてもS5の出番が多い。

そのS5は、基本的な性能には問題がないのだが細かい使い勝手が惜しいと感じる。1.2で書いた要素以外にも、背面液晶とEVFの見え方が異なることが気になり、EVFを見ながら撮影した後に目を離して液晶を見たときに見え方が異なっていて困惑する。

キットレンズの20-60は超広角域スタート、シャープな描写でよく写るレンズなのだけど、平面的な描写に感じられることが時折あり、なんというか味のようなものが薄く、物足りなさを感じるときがなくはない。

ちなみにMC-21にキヤノンレンズをつけるとAF-Cに対応しない(グレーアウトして選択できない)し、AF-Sも合焦まで時間がかかることが多いので、AFを用いるのであればネイティブレンズ以外の選択肢はないと思って良い。

・ZV-1

RX100後継として導入したが、静止画の画質が今ひとつシャキッとしない印象。動画に関しては優秀で、録画時間に制限もないしUSB給電も可能なのでずっと回しておく事ができる。画質もきれいだし、小型軽量なのでミニサイズのジンバルに載り、セットアップ全体が小型で済む。

・X-S10

サイズが小さく、軽くてよく写る、ただ使った感じがしっくりこない、そんなカメラ。

こちらの操作(入力)と撮影された写真(出力)の間に、こちらには見えないカメラ側の操作が複数介在していて、うまくいっているときは良いのだけど、問題が発生したときにその問題がどこから来ているのかが分からず解決方法が思いつかない、そんな感じ。カメラに機嫌があって、その機嫌のとり方がわからないというか。個人的に使って感じた問題点は、AFと描写の不安定さ。

AFに関しては、どこにもピントが無かったり、微妙な後ピンの写真がたまに混じってくる。大外しではなく微妙にピンを外すので液晶の縮小された再生映像では一見シャープに見え、拡大して確認しない限り見過ごしてしまうところが厄介。晴天日中の遠景にAF-Sしても出るので傾向が把握できず、AFを信頼できない。

描写の不安定さに関しては、ディテールの描写が曖昧な印象を受ける。ピントが合ったところはちゃんと解像しているのだけど、細部のコントラストが低めで、本来分離して見えるはずのところがグラデーションになってしまっているというか。例えるならネガフイルムっぽい階調表現で、これが好きな人もいるかもしれないが、私は抜けが悪い感じで苦手。暗めの被写体であったり、室内であったりと、光量が少なかったり、アンダー目に露光された場面でそうなりやすい感じはする。