仙台写真月間・五

大宮瞳子展を見た。
作者の方とお話ししたので書く事は少ない。

とてもファンタジックな展覧で、好みだ。
ファンタジック、と言っても倉田さんのSFっぽい幻想とは異なり、大宮さんのファンタジーはどこか残酷で、童話的だ。
パンフレットに使われている写真がとても艶めかしくて、好きだ。この写真を挟んだ前後の構成が良かった。見も知らぬ他人の夢を掴んでしまったような、ぬるりとした感覚がある。この艶めかしさ、遙か遠く夜の国に足を踏み入れてしまう様な、独特の感覚が好きなのだろうか、私は。

昨年と比較すると、画面の明るい写真が多くなった。日中の写真が増えたのだろうか。明るい写真の多くが昨年のように乾いていない。独特の湿度のようなものが、画面に漂うようになった。反面、暗い写真は乾いたものが増えた気がする。
写真の構成は、物語的だった昨年と比較して、ぐっと断片的になった。物語が、人間の移動と言うにはあまりにも光と闇の間を素早く行き来しすぎる。もしこれが人ならば、肉体を捨てた人間だろう。
大宮さん曰く、物語を作る事を意図的に拒絶したということなので、当たらずとも遠からず、というところだろうか。

インクジェットによるプリントは、不思議な粒子感があって興味深い。このプリントが一部の写真に見られる独特の雰囲気を作っているのだと思う。