墓参

たたきつけるような雨の中を、墓参に行った。寺の入り口であり合わせの香を買って、小さな墓に供える。地下になかば埋め込まれている墓地は、香の煙が充満して抜けない。ろくに手も合わせないまますぐ外に出てきたのに、雨は止んでいた。整髪剤に絡みついた香の匂いが家についてからも取れず、家族が寝静まった頃に髪を洗った。
あのとき雨は止むべきではなかった、とシャワーに打たれながら思った。