朝
スタジオに向かう途中で、先週その枝を折り取った、桜か梅のような花をつける木が雨に打たれている姿を私は横目に見た。昨夜の雷鳴と強風で花はすっかり落ち、木は無残に黒い枝を晒していた。路肩には雨を吸い込んだ重たげな花弁の絨毯。
私はスタジオに入り、先週折り取った枝を取り出した。枝は枯れていたけれども、すっかり水気を失った、重さのない花弁が先週とほぼ同じ位置に残っており、手に取ると強い香りが鼻を刺した。私は枝を水のない花瓶に移し、黒いびろうどを敷いた机にセットした。光を吸う黒の上に、重さのない花弁が数枚、音もたてずに散った。